WoWに支援を求める日本人女性の声

  1. 問い ) WoW は何をしているグループですか?  WoW の基本的な考え方を教えください。
  2. 問い)あなたは WOW にどのように関わっているのですか?
  3. 問い)日本から連絡してくる人では、どのような人ですか?いくつかのケースを可能な範囲で教えてください。
  4. 問い) WoW は、「中絶薬は安全で、妊娠周期や、既往歴でリスクが低いことを確認すれば、病院で服用する必要も入院する必要はない」との考え方です。自宅で飲んでトラブルや副作用で困った例はありますか? 日本以外の国のケースでも、中絶薬が合法に国ではは自宅で服用ですが、病院に駆け込んだケースはありませんか?
  5. 問い)中絶薬は現在の日本では認可されていませんが、合併症などの症状があったときはどうすればいいの か、という疑問もあります。
  6. 問い)中絶というと難しい行為で、とても、自分でできるようなものではないように思えますが。
  7. 問い)中絶薬は、 1988 年のフランスに始まり、現在では約80カ国で中絶薬が使われているのですか。
  8. 問い)なぜ、こんなに成功率が高いのですか?
  9. 問い)病院で中絶したい人もいるかもしれない、という意見もあると思います。
  10. 問い)中絶が簡単になると、避妊をしなくなり、望まぬ妊娠数が増加する、という懸念もあると思います。
  11. 問い)中絶薬を悪用されるのではという懸念もあります。転売、あるいは、妊婦の食べ物に入れてしまうなどの心配もあると思います。
  12. 中絶薬を悪用されるのではという懸念もあります。転売、あるいは、妊婦の食べ物に入れてしまうなどの心配もあると思います。
  13. 問い)外科手術がイヤで、妊娠週数で嘘をいい、12週過ぎた時点で中絶薬を服用するようなケースは?
  14. 問い)最後にひとことお願いします。

「Women on Webスタッフ・カタリーナさんに聞く」動画内容ご紹介
(動画はここをクリック)
​​​​​「SOSHIREN女(わたし)のからだから 」主催40周年記念イベント第1回でのカタリーナさんの動画の内容を文字にしてお伝えします。動画を視聴した方も、できなかった方も、どうぞお読みください。日本での中絶の状況を垣間見ることができる内容だと思います。

by Women on Web staff Katherine WoWスタッフ カタリーナさんに聞く

 

問いWoWは何をしているグループですか? WoWの基本的な考え方を教えください。

 

まず、WoW の基本的な考え方を述べます。私たちの原点は、効果的・安全で苦しくない中絶は、当然あるべき基本的人権である、ということです。中絶を禁止、あるいは、厳しく制限しても中絶は起こる、だから中絶は合法的で安全でなければならないし、中絶が高い値段である必要も全くないと私たちは考えます。当たり前ですが、私たちは、女には、中絶をすることを自分自身で決断する判断力があると信じています。あえてこう言うのは、日本を含める多くの国の政策や法律で、女の判断力が信じられておらず、女は、誰かにガイドされ指導されることが必要なように想定されているからです。WoWは、女を信じることを基盤に成り立っています。私たちは、女性がどのような理由で中絶を選択しているのか等を含め、女性が言っていることを信じる、これらが出発点です。

 

活動としては、何らかの理由や状況で安全な中絶を受けることができない人たちに、その人が住んでいる国、あるいは置かれている状況で、どのようなオプションが最善な中絶の方法か等の情報を提供したり、中絶薬を入手できるよう、医師が薬を処方して実際に中絶薬を提供しています。組織の設立者は、レベッカ・ゴンパーツというオランダ人の医師です。彼女は、かつてグリーンピースの専属医として、乗船し、世界中を回っている時、中絶が違法である国々で女性が闇中絶を受け、ひどい状況に追い込まれることを目撃しました。レベッカは、その後、Women on Waves という組織を設立し、中絶が違法・制限されている国を船に乗ってまわり、中絶を希望している女性に安全な中絶を提供する活動を始めました。

2005年からは、インター ネットを使って、遠隔からオンライン診察を記入してもらい、中絶薬を郵送する活動を始めました。これがWomen on Webです。中絶の費用が非常に高く、配偶者同意が必要など、中絶をする側にとって決して優しいとは言えない日本。そこからもリクエストが多々あります。レベッカ=ゴンパーツ、Women on Waves あるいは、Women on Webで検索すれば、ウィキペディアにも詳しく説明されています。また、以下のクーリエジャポンの記事は元々英語のものが訳されています。中絶が違法な国で、中絶が必要な女性を支援しているフィルムも見ることができます。

 

Women on Waves https://en.wikipedia.org/wiki/Women_on_Waves

Women on Web https://ja.wikipedia.org/wiki/Women_on_Web

レベッカ ゴンパーツ https://ja.wikipedia.org/wiki/レベッカ・ゴンパーツ

クーリエ・ジャポン 2021.12.15 https://courrier/news/archives/271346

 

Women on Web は、中絶は女性を罰するものでなければならないという考え方、あるいは、中絶する女は自分勝手という考え方にも、全く賛成しません。これは日本にも根強く存在する考え方だと思います。中絶は基本的人権である以上、安全で、苦しいものではなく、安く入手できなければなりません。中絶は誰にでも起こりうることであり、女にしてみれば、病院で医療従事者に嫌味を言われ、優しくされない理由はありません。後でも紹介しますが、医療従事者の懲罰的な態度も、日本の女たちが病院で中絶をしたくない大きな理由の一つです。

 

中絶しよう、との思いはコロコロ変わる思いつきではなく、自分で判断した上での賢い決意である。こうした女への信頼の上に成り立って活動しています。これは、スタッフで度々確認され、共有されている原点です。

 

問い)あなたはWOWにどのように関わっているのですか?

 

私は日本に住んでいませんが、日本語と英語でリクエストを求めてくる女性へ返信する仕事をしています。日本語で対応するのは、大半が日本に住む女性です。時々日本の外に住む留学生や、仕事で海外に赴任している日本人からのリクエストもあります。英語圏は、ヨーロッパ、アフリカ大陸、アジア諸国、中東、非常に広範囲にわたっています。

私たちが女性たちのリクエストに返信する際、単にWomen on Webから中絶薬を提供するのではなく、その人が、その人の状況、あるいは住んでいる国によって一番好ましい解決方法は何であるかのアドバイスもします。私たちは、Women on Webのみから支援を受けることを目的としているのではありません。それぞれの状況や、住んでいる国にあって、その人が、最も安全で負担のない方法で中絶ができるよう情報を提供し、支援することを目的としています。

ですから、その人が住む国で中絶を受ける方がいい場合、あるいは、中絶薬を、その人の住む国で探し、入手するほうがいい場合は、そうアドバイスしています。これは、郵送にかかる時間を考慮して、たとえば、妊娠週数にもよりますし、その国のインフラストラクチャーや郵便事情にもよります。国際小包が途中紛失することが多い国からのリクエストなら、自分の国で探すほうがいい場合もあるからです。その際、私たちが知っている最大限の情報を提供します。これらの情報は常にアップデートされ、また、医師やコーディネーターなどと常に連携しまいます。

 

問い)日本から連絡してくる人では、どのような人ですか?いくつかのケースを可能な範囲で教えてください。

 

まず始めに断っておきたいのですが、WoWに連絡する人は、特別な状況にあるような女性たちではありません。望まぬ妊娠をした理由も、中絶を選ぶ理由も、日本の病院に行く人、WoW を選ぶ人ほとんどの女性に共通しています。むしろ、中絶をめぐる日本の中絶の法律や政策が、女性とカップルがおかれる様々な状況を網羅しきれない、非常に不完全なものなのではないでしょうか?また、医療従事者の態度も含め、日本での中絶のやり方を女性は嫌がっているのだということを、日々仕事をしていて実感します。

 

全体像に関しては、WoW のデータをまとめたものが発表されているので、そこから紹介します。(https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60220124c5b689330e322bbb

 

Women on Web-Japan 1.png

円グラフを見ると、2013年から2020年まで相談した女性たち4159人のうち、54%が「避妊をしなかった」、39%が「避妊が有効でなかった」、そして6%が「レイプされた」ことを原因と回答しています。

 

ここにはWoW に特化されるような理由はないと思います。避妊をしなかった、という背景は、男女とも日本社会の性教育の乏しさ、協力しない男、避妊について話し合えない男女関係など、すでに知られていることで皆さんも十分ご存知だと思います。

妊娠中絶を選ぶ理由にしても、2019年にWoWに相談した女性のほとんど「子どもを育てることが金銭的に無理である」「この時点でどうしても子どもを持つことができない」「私の家族は完成している」「パートナーが子どもを望まない」「年齢(若すぎるもしくは高齢すぎる)」「学校・大学を卒業したい」が主にあげられています。これらの理由も、ごく普通の理由です。

 

では、なぜあえて日本の病院ではなくWoWなのか。ここの部分を明らかにすることは、日本の現在の政策や法律が欠けている部分を明らかにすることと通じます。受け取るリクエスト数もとても多く、一つのリクエストにいくつもの理由が重なっているので、理由を統計にすることは難しく、理由を一括りにすることにも抵抗があるのですが、日々メールを受け取っていて、圧倒的なのは、3つの理由です。

1 日本での中絶が高すぎる。 2日本の中絶の仕方が嫌だ。3プライバシーの問題。

 

プライバシーの問題・個々人の状況は、本当に多岐にわたります。一人として同じ人生を歩む人がいないように、本当に千差万別です。例えば、結婚している人だと、夫に妊娠している事実を告げると無理やり生まされる、10代だと親に知られたら追い出される、地方だと病院に知り合いがいる、自分自身の空間で二人きりで子供とお別れをしたい、小さな子がいて病院に行く時間がない、学校や仕事があり入院できないなど、本当に千差万別です。これらは、誰にでもありうると思います。ですが、日本の法律では、これらのようなごく普通の場合においても、女性は解決策をなかなか見つけることができないのです。中絶に配偶者同意が求められ、結婚していないのに相手の男性の同意や、未成年なら親の同意が求められます。中絶費用が高いから、経済的に夫に頼っている状況だったりすると、とても中絶代を払うことができないなど、ハードルが高すぎるのです。

 

また、もうひとつ目立つ理由に、日本の中絶が嫌ということが挙げられます。それは麻酔・外科手術というやり方・時代遅れの技術がいやだということと、医療従事者の態度がいやだという2つが目立ちます。外科手術にはソウハ手術と吸引法がありますが、多くの女性は、特に方法までは言及しませんが、日本の手術は嫌だ、日本の中絶のやり方は最悪だ、と多くの方がおっしゃいます。ソウハにしても吸引にしても嫌なようです。また、手術のやり方が嫌なことはもちろんのこと、医療従事者の懲罰的な態度が嫌だ、と、手術が行われる環境も嫌な理由として頻繁に遭遇します。

 

 

いくつかの語りを紹介します。初めに断っておきたいのですが、これらは、この4年半、Women on Webで仕事をしていて、「ああ、なるほど、これでは日本で中絶したくないだろう、本当に日本ではどうにもならない」と、非常に印象に残っている状況や語りです。少し強烈な部分もあるかもしれませんが、現実ですし、また皆さんにとって日本の中絶事情の不完全さがわかりやすいように、あえてこれらの語りを紹介します。特定できないよう、語尾など変えてあります。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

語り1)

「日本の中絶のやり方をどうしても受けたくなく、まだ週数も少ないのでできるかぎり自然流産に近いやり方でと思い希望しました。」(妊娠6週、23歳、日本での中絶外科手術これまで2回経験)

 

語り2)

「なぜ日本の病院で手術を受けたくないのかとい理由をお話しします。これまで日本で中絶外科手術を受けた経験があります。値段が高すぎるというのもそうですが、それ以上に嫌なのが、麻酔をかけられて眠っている間に、知らない人に自分のお腹の命を掻き出されているということです。悲しくて仕方がありません。私はもう絶対に外科手術を受けたくありません。麻酔をかけられ、知らない人に知らない間に行われるのではなく、自分の意志で薬を飲み、痛みや出血を自覚し、中絶していることを自分で理解したいのです。すべて自分の手で終わらせたいのです。』(妊娠7週、20歳、日本での中絶外科手術経験2回)

 

語り3)「こんにちは。今回、望ましくない妊娠をしてしまい、いろんな方の経験談を見るためにインターネットで調べていた時に、Women on Webのことを知り、初めからこの団体にお願いしようと決めていました。

病院で手術を受けないのは、お金が無いのも一つの理由ですが、もっと大切なのは、元気に産んで育ててあげられない分、最後のお別れの瞬間は静かにこの子と二人だけの時間にしたいという気持ちが強いからです。付き添ってもらう友達には少し離れたところから私たちを見守ってくれるよう、お願いしました。中絶を選んだことは一生後悔しません。ただ、この子と二人でお別れをしたいのです。

自分で決めた、強い覚悟の上です。どうかチャレンジさせてください。よろしくお願いします。」(20歳)

 

語り4)

「夫にモラルハラスメントとDVを受けています。お金はすべて夫が握っており、私には収入や貯金がなく、何より精神的に、中絶手術は耐えられません。日本の中絶手術は残酷です。かと言って親も夫も出産は反対。私も一人で妊娠を継続したり、出産することはとてもできません。本当に辛いです。私は薬で中絶するか、妊婦でこの子と自殺するしかありません。助けてください。」

「まともに働けない私は、年に数回ネットで体を売っています。それも辛くて年に数回しかできません。外科手術を受けるくらいなら夫を殺して私も死にます。でも憎い夫は殺せても赤ちゃんを殺すことはできません。」

 

中絶後のメッセージ「薬で中絶した場合の赤ちゃんの死因はなんですか?苦しんで亡くなったのでしょうか?なんの協力もせず、私にだけこんな思いをさせる夫が憎い」

(34歳、妊娠8週、初めての妊娠)

 

語り5)

「今夜、仕事が終わって自宅に到着してから服用予定です。

私のパートナーは外国人で、私が主な収入を稼いでいます。仕事が大変で、とても何度も通院する時間的な余裕はありません。相手の男性は故郷の家族にも仕送りしているので、中絶手術の費用を少しでも負担してもらうことは無理です。

 

いろいろな事情で、結婚して産む選択はできず、中絶手術の同意書にサインをしてもらうことすら難しく、この決断に至りました。

 

この一年くらいは、低容量ピルを飲んでいましたが、体調を崩したこと、ピルをもらいにいくだけでも半日以上かかることが苦痛で2ヶ月ほど服用できなかった時、妊娠してしまいました。病院やピルの種類を変えればよかったかもしれませんが、そんな余裕もありません。

 

Women on Webには本当に感謝しております。無事にすみましたら、また経過を報告いたします。(39歳、リクエスト時妊娠33日、初めての妊娠)

 

この語りからは、ピルという避妊方法が存在しているにもかかわらず、アクセスが難しい、病院に行くにも時間がかかりすぎるなど、避妊も実行しにくい悪条件が日本にあることが分かります。

 

語り6)「私は親に体を売らされています。そんな中、お金があるはずもなく、とても日本で中絶などできません。助けてください」(30歳、6週)

 

語り7)「夜道を歩いていてレイプされました。私はかつて日本の病院で中絶手術を受けたことがありますが、看護婦や医者にまるで汚いものを扱うかのように扱われました。今回、レイプされた上に、病院で再び屈辱を受けることに耐えられません。」(21歳、5週)

 

語り8)「私は男たちのペットのように扱われています。性欲のはけ口に使われているだけです。私を助けてくれる人など誰もいません。お財布には五十円しかありません。日本で中絶をするために、私は売春をしてお金を稼ぐしかありません。どうか助けてください。あなたたちの団体しか頼れません。」(23歳、妊娠7週)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

経済的にすでに困難で、夜遅く働かなければならず帰途でレイプされたなど、同時に経済的に非常に困難な状況にある場合も多かったり、何らかの形ですでに周りの人に牛耳られている状態にある場合が多いことが目につきます。もちろん、背景は様々です。ですが、レイプされた、という辛い状況の中で、病院を訪ね、知らない人に何が起こったか話をし、大金を払う、これは本当に辛いことだと思います。

 

もちろん、皆さんが想像できる、今日明日誰でも遭遇するかもしれない、ごく普通の状況も多々あります。例えば、「週末に夫と家でお酒を飲んでいて、夫と一緒に酔っていたのでつい避妊を忘れ、妊娠してしまいました、でも、日本の中絶手術は嫌なので、Women on Webの支援が欲しいです」とか、「妊娠してしまいましたが、コロナウィルス危機で失業してしまい、お金がなく、Women on Web の支援が欲しい」などの理由です。

 

毎日のように相談メールを受け取りますので、全てを紹介することはできませんし、どの要素・理由が一番大きいか、などと比較することはできません。日本での中絶が高額であることは多くの人が挙げていて、値段の点が一番大きい理由である人もいれば、今紹介したように、高額であることも理由ですが、それよりも複雑な、あるいは繊細な人間関係、あるいは中絶をするにあたっての「これは嫌だ、こういうのがいい」という感性・感覚の問題もあります。

 

問い)WoWは、「中絶薬は安全で、妊娠周期や、既往歴でリスクが低いことを確認すれば、病院で服用する必要も入院する必要はない」との考え方です。自宅で飲んでトラブルや副作用で困った例はありますか? 日本以外の国のケースでも、中絶薬が合法に国ではは自宅で服用ですが、病院に駆け込んだケースはありませんか?

 

まず、事故をどう定義するかを明確にしたいと思います。中絶薬を使った中絶は、自然流産と同じ症状なので、ある程度の痛みや出血があるのは当たり前です。どれくらいの痛みに耐えられるかは個人差があり、医療的観点からは異常な痛みでなくとも、痛みにびっくりすることはあるかもしれません。ですが、これは、医療事故とは言えません。これは、自然流産に伴う出血や痛みで救急車を呼んだことが事故にされてしまうのと同じことだと言えると思います。中絶薬が合法的に使われている国の調査によると、出血多量で輸血というのも、0、04%と低いです。(Aiken, Ara, PA Lohr, N Ghosh and J Starling :2021

 

事故を、「死亡、輸血が必要なくらい出血多量、その後妊娠しにくくなる、あるいは何らかの障がいが残る状況」だと定義します。私はWoW4年半仕事をしており、中絶前、中絶の最中、中絶後の相談メールに対応していますが、キッパリ言えます。自分がかかわったWomen on Webの相談の中で、このような事故に遭遇したことはありません。そして、このデータは正確だと言えると思います。

なぜなら、日本に住む人が、WoWから中絶薬を提供してもらい、あれ? と思うことがあったら、まず私たちにどうすればいいか相談してきます。現在の日本では許可されていない薬を使っているわけですから、日本の病院ではなく、連絡は、まず私たちにしてくるはずです。実際、私たちは、あれ?と思うことがあれば、何でもすぐにお知らせください、と常に伝えています。どんな質問にも真剣に答えます。どんな小さな質問にも、答えが分かり切っているような質問も、絶対に見下したりしません。これは、スタッフ間で常に確認し合っていることです。

例えば、中絶前にも、中絶の際中にも、中絶後にも、こんな質問が多くきます。

・出血がこれくらいですがこれは普通か、

・出血が始まらないがどういうことか、

・痛みがこれくらいなのは普通か、

などです。すぐに病院に行かなければならない状況や症状に関しても、WoW専属の医師か訓練を受けていますし、判断が難しい場合でも、すぐに医師と連携を取り合い、女性にアドバイスをします。病院に行く理由で多いのは、結局、出血が起こらず、中絶が起こっていないような場合。あるいは、出血が起こらず、下腹部の痛みが次第に大きくなる場合で子宮外妊娠が疑われる場合です。

 

私たちは、中絶薬を服用し、中絶を終えた方には、その経過をどう経験したかのアンケートもとっています。その質問の中に「病院に行きましたか?」という質問もあり、病院に行った場合、その理由も書いてもらっています。私はすべてのアンケートに目を通していますが、今まで、病院に行った理由は、本当に、ほとんどが「中絶が成功しているか確かめるため、超音波をしてもらった」です。

 

問い)中絶薬は現在の日本では認可されていませんが、合併症などの症状があったときはどうすればいいのか、という疑問もあります。

 

合併症の兆候があったとき、ためらわずに病院にいくように伝えます。健康を守るため、市民は病院で治療をしてもらう権利が絶対にあるからです。たとえ、医学的観点からは異常な程度でなかったとしても、中絶をしている人が痛みや出血に驚いて救急車を呼ぶこともあるかもしれませんし、それで悪いことは何もないと思います。

また、中絶という大事ですし、日本では認可されていないものを使っているゆえに、痛みや出血にびっくりしやすい、というのもあるのではないでしょうか。薬を評価する際には、薬が持つ効果、安全性、信頼性のみならず、その薬が服用される設定、環境も大きく影響します。認可していない日本だからこそ、服用も陰で服用され、不適切な服用の仕方になり、事故が起こりやすくなるのではないでしょうか。

また、どこかから入手した中絶薬を使ったことが判明して、中絶薬を使っていたこと自体が事故として報道されるのかもしれませんが、それは、中絶薬の信頼性、安全性とは関係のないことです。ですから、事故でないことが事故として報道されることもあるのではないかと思います。

 

ともあれ、私が知る限り、WoWが支援をしたケースで、日本人の死亡事故、長期的に残る後遺症などに遭遇したことはありません。

 

世の中には、中絶薬を提供している組織がたくさんあると思いますし、偽物の薬を提供し、もうけるために売っている組織もあります。実際、「お金を払って某所から薬を手に入れ服用したが、出血も痛みも起こらず、中絶が起こらなかった、妊娠がまだ継続している、まだ10週未満だから、信頼できるWoWに支援して欲しい」等のメールも受け取ります。Women on Webあるいは、自分の国の医師に処方してもらうなど、信頼できるところから薬を入手することは大切だと思います。

 

問い)中絶というと難しい行為で、とても、自分でできるようなものではないように思えますが。

 

この仕事を始め、私も、成功率の高さに驚いています。でも可能なんです。

 

安全な中絶には、三つの要素が必要だと思います。一つは安全で効率的な薬、二つ目は薬の使い方の正しい指示を含める、服用を応援する体制、三つ目は中絶する本人の協力。これは、言いかえると、薬を提供する側と、薬を服用する中絶する人の間にある信頼関係であるとも思います。これらを、WoWはすべて兼ね備えている、と言えます。

 

問い)中絶薬は、1988年のフランスに始まり、現在では約80カ国で中絶薬が使われているのですか。

 

ヨーロッパ、カナダや、いくつかの州を除くアメリカ合衆国でも中絶薬は合法ですし、最近中絶が合法になったアルゼンチンなどでも、合法になって、いきなり中絶薬による中絶です。ヨーロッパの多くの国では、自宅で中絶薬を服用することは普通の医療になっています。特にコロナウィルス危機で、病院まで行けない状況が様々ある中で、郵送で中絶薬を提供し、遠隔から相談にのり、指示を受けるということは普通になっています。フランスでは、ロックダウン故に、2020年4月以降、医師と中絶を希望する女性の対面も無くなり、郵送による中絶薬提供で自宅での中絶実施となりましたが、事故もなく、非常にうまく機能しています。また、Women on Web 内の医師に聞いてみたところ、中絶を行う前に、クリニックで医師との対面が必要なドイツ、オランダ、カナダでも、事故というのは聞いたことがないということです。本当に可能なんだ、と私も驚いています。

 

Aiken, Ara, PA Lohr, N Ghosh and J Starling (2021) “Effectiveness, safety and acceptabilit of no-test medical abortion (termination of pregnancy) provided via telemedicine: A national cohort Sutdy”, in An International Journal of Obstetrics and Gynaecology, 129(8), pp. 1464-1474. 

https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1471-0528.16668

 

例えば北アイルランドを除くイギリス(グレートブリテン)の三大中絶クリニッ

クが、テキサス大学と協力した調査があります。2020年コロナウィルス危機で自

由に外出したり、クリニックを訪れたりすることが困難な中、英国は、病院など

で診察・超音波検査をすることなく、電話やテレビ電話で女性と話をし、郵送で

中絶薬を送ることを始めました。

 

注)北アイルランドでは20191022日に中絶は合法化されましたが、コロナ

ウィルス危機にあっても、遠隔からの中絶薬提供は行いませんでした。(ちなみ

にアイルランドは2019年1月1日に合法化)。

 

調査は、コロナ前、2020年1月から3月の間に病院で診断などをして中絶薬の中絶をした場合と、ロックダウンの下、4月から6月に電話などで遠隔から口頭でのみ診察をした場合の、中絶の成功率の差、中絶ができるまで待たされる日数、中絶へのアクセス率を、52142人を対象に調査したものです。この時期に3地域で構成されるグレートブリテンで行われた中絶の85%をカバーしています。

 

特に診断なしで、遠隔から電話などでの口頭診察のみの場合、中絶薬が女性の手元に届く平均日数は、対面が必要な場合に比べ、4、2日減少し、何か心配があるため、一応病院を訪れた、というケースは、0、04%から0、02%に減少しました。病院を訪れなければならない場合も、子宮外妊娠であったなどのケースです。

断っておきますが、子宮外妊娠の場合、中絶薬を服用しても中絶は起こりませんが、健康を損なうことはありません。出血等がない、でも、下腹部の痛みが大きくなる、おかしいな、と思い病院に行き、子宮外妊娠の治療をしてもらう、ということです。

英国の調査の対象になった人のうち、0、04%が10週を若干超えていた、ということですが、それでもすべて無事に中絶が終わっています。全体の98%は無事に中絶がおわっています。中絶後のアンケートは、96%が満足している、と答えています。

 

また、複数の調査が外科手術よりも、中絶薬を使った中絶の方が、子宮内向癒着症を起こすリスク、つまり、中絶後妊娠できなくなったり、妊娠しづらくなったりするリスクも低い、と報告しています。コロナウィルス危機が終息に向かいつつある現在、英国は、対面診察による中絶薬提供を再開する予定ですが、今後も薬の服用は妊娠10週以下の場合、自宅で行われるということです。(https://www.nhs.uk/conditions/abortion/what-happens/)これらの報告は、薬を使って中絶をする際、必ずしも入院する必要はないことを示しています。

 

(コロナウィルス危機は若干終息しつつありますが、ウェールズ、イングランドでは遠隔診療は継続しています。スコットランドでは、現在議会で審議中ですが、遠隔診療が継続見通しが強いということです。これらの決定には、Women on Webを含む女性運動の活動なども功を奏していますし、遠隔診療が以下に円滑に行われたかということも意味しています。)

 

問い)なぜ、こんなに成功率が高いのですか?

 

薬が確立されたものであることに加え、中絶する女性本人が中絶を成功させたいと、しっかり自覚しているからだと思います。成功させたい、と思うから、教育水準などに関係なく、服用の仕方もしっかり読んで従うし、たくさん質問してきてくれるケースばかりです。これは、日本の女性とWoWの関係にも言えることだと日々実感しています。だから、私たちの支援を受ける日本人女性の間にも事故がないのだと思います。

 

問い)病院で中絶したい人もいるかもしれない、という意見もあると思います。

 

自宅で中絶薬を服用する方が、病院で中絶薬あるいは病院で外科手術の方が絶対に優れている、と言いたいわけではありません。選択があるべきだ、と言いたいのです。

 

WoWから中絶薬を受けるかどうか迷い、「やはり、病院で受けます」と最後に病院で外科手術を受けることを決断される人もいます。この選択にもいろいろ理由があると思います。医療従事者に囲まれて、何かあったとき、すぐに手をうってもらえるように安心しながら中絶をしたい人、本当は薬で流産を喚起する方法の方がいいけれど、現時点、日本で認可されていないから病院を選ぶ人、自宅では何となく嫌な人。それはそれでいいと思います。問題なのは、現在の日本がそうであるように、病院でないとダメだ、医師がそばにいないとダメだ、外科手術でないとだめだ、女が自分でできるわけがない、と決めつけることです。選択があるべきです。病院であえて入院したい人もしれませんが、必ずしも必要ではないということが言いたいのです。何故ならオセアニア、ヨーロッパや北アメリカでは、自宅で薬を服用して中絶をする方法が確立した方法であり、すでに安全と効率性は確認されているからです。ヨーロッパや北アメリカの女たちがやっていることを、日本の女ができない理由はどこにもありません。

 

問い)中絶が簡単になると、避妊をしなくなり、望まぬ妊娠数が増加する、という懸念もあると思います。

 

先に紹介した語りの中の一つにもあったように、中絶薬を使った中絶も、外科手術よりは苦痛が少ないにしても、やはり、痛みや出血はありますし、また、「私は赤ちゃんを苦しませたのでしょうか」というような質問も受け取ります。つまり、多くの女性にとって、中絶はどうでもいい出来事ではないと思います。「中絶を選んだことを絶対に後悔していないけれど、これからは気を付けます」という声も聞きます。

 

また、この地図を見てください。向かって左は中絶率、向かって右の地図は望まぬ妊娠率です。色が濃い方が率が高いことを示しています。この世界地図を見ると、中絶が禁止されている・厳しい国でのほうが望まぬ妊娠数、つまり中絶数も多いことがわかります。残念ながら日本も多いです。中絶しやすくなると安易になり、望まぬ妊娠が増える、というのも間違っていることがわかります。また、おそらく、中絶が禁止されていない・厳しく規制されていない、さらに言うと、中絶において女性が尊敬されているということは、その国の考え方の反映で、性教育や、男女のコミュニケーションなども充実しているのだと思います。「性教育イコール寝た子を起こす」という考え方の間違いがわかります。

 

問い)中絶薬を悪用されるのではという懸念もあります。転売、あるいは、妊婦の食べ物に入れてしまうなどの心配もあると思います。

Women on Web-Japan 2.png

 

中絶薬を悪用されるのではという懸念もあります。転売、あるいは、妊婦の食べ物に入れてしまうなどの心配もあると思います。

これらの懸念は中絶薬に限ったことではありません。問題は、中絶薬ではないということを明確にしたいです。中絶薬でなくとも、妊婦が口にしてはいけない薬は多くあり、簡単に入手できるものもたくさんあります。例えば、どこでも入手できるパラセタモールをある一定量以上服用すると死に至りますが、パラセタモールの販売は制限されていません。問題は、薬が存在することではないのではないでしょうか。なぜ、中絶となると、制限されるのか、誰が何のために制限したいのか、この点をよく考えて欲しいです。

 

転売ですが、禁止されていなければ転売されることはないでしょう。

 

問い)外科手術がイヤで、妊娠週数で嘘をいい、12週過ぎた時点で中絶薬を服用するようなケースは?

 

カナダや、ヨーロッパでも、国ごとに週数の差があるとしても、中絶薬を使えるのは初期妊娠、基本的には、1012週ぐらいまで、それ以降は外科手術となる国が多いですが、中絶薬も外科手術も合法で中絶が権利として認められ、中絶薬も外科手術も保険で賄われ、女の財布に影響が

 
   


ないという状況の中では、女が中絶に関して嘘をつく理由はありません。WoW 内のオランダ人医師によると、オランダでは中絶薬が無償で提供されるそうですが、中絶の週数を確かめる際にも、超音波を使うことも稀だそうです。これは、先ほどの、英国の調査にも関連しています。

つまり、薬を処方する側は、女が自己申告する、いつが最後の月経であったかをもとに週数を判断するということです。分からない、という場合に限って超音波をします。

 

また、妊娠中期で中絶薬を服用した場合に関してですが、スカンジナヴィアでは、第2トリメスターつまり妊娠中期の中絶も中絶薬を使って行われています。それくらい外科手術は避けられているのです。ただ、中期ですと、胎児も見えるし、合法に中絶をできる期間の中絶であっても、出てきた胎児が生存しているかもしれないし、胎盤も出来上がっているので、自宅ではなく、病院です。ただ、技術的には、中期であっても、中絶薬を使った中絶は可能であるのです。病院がしっかり支援してくれれば、たとえ妊娠中期の中絶であっても、薬を使って行うことができるのです。

 

ヨーロッパの国々で、中絶する女のプライバシーを尊重し、費用も国が負担する、女性が自分で場所を選び中絶をするという現実がある中で、日本で中絶薬がいまだ認可されておらず、認可されても、入院が必要で、費用も外科手術並み、というのは、本当に、日本がいかにジェンダー後進国であるかを如実に表していると思います。この差は信じがたく、その貧しさは、非常に恥ずかしいことだと思います。誰を中心とした医療であるのでしょうか?

 

問い)最後にひとことお願いします。

 

私は、WoWで仕事を始める前にも、女性の健康の権利や、ジェンダーの問題に敏感なほうだったと思います。ところが、ここで働くようになってから、働く前に持っていた偏見がより削がれ、削がれているのを感じます。事故が起こらない、というのは、女性は自分で自分の体の管理をすることができる、責任がある、あるいは、「事故を起こさないぞ」と女が自分自身がちゃんと思って、その時おかれている人生、望まない妊娠をした状況を解決し、いい方向へ持っていく意思や願望、能力を持っているということなんだと思います。私が思っている以上にそうなんだと実感しています。現在の日本社会が持っている女性への偏見は、本当に見直されなければならないと思います。

最後に、いくつかのサンクスメッセージを紹介します。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

痙攣もなく、痛みも出血も思っていたよりかは軽かったです。

早く日本でも薬が承認されてほしいと思いました。本当にありがとうございました。

(妊娠7週、26歳、初めての妊娠)

 

今回は本当に助かりました。心配で不安でたまらず、同じ質問を何度もしてしまいましたが、いつも答えてくださりありがとうございました。私はあなたの活動を応援します。コロナウィルスであなたたちも大変でしょうが、どうかみなさま、健康に気をつけてこれからも頑張ってください。(妊娠7週、25際、初めての妊娠)

 

ご丁寧に対応していただきありがとうございました。

痛みも出血も落ち着いてきました。本当に助かりました。women on webさんの活動を心より応援しております。これからも世界中の困ってる女性を助けてあげてください。

(妊娠6週、28歳、3度目の妊娠、一人出産、一度は流産)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2021117日の「読売新聞」が、中絶が禁止されているマルタの女性が、Women on Webの支援をうけることにより中絶をできることを報道しています。Women on Webのやり方は、日本の新聞もすでに肯定的に報道しているのです。

 

次の新聞記事は、最近のドイツのものです。まとめると、コロナウィルス危機下、ベルリンが遠隔医療で電話やインターネットを使った対面で医師が女性と話し、中絶薬を提供する、としているが、なかなかうまく行かない、という内容のものです。このような活動を、実は、2005年から、15年もの間、Women on Webという団体が行っている、とも報道されています。

 

Women on Webがやってきたことを、世界の都市や、女性が必要としているのだ、ということです。

 

(収録20221月)

Women on Web-Japan 2.png